新型コロナウイルスはフランス語で男性名詞か女性名詞か
今年新しく生まれた言葉として、「Covid-19(新型コロナウイルス)」 があげられますが、この新語は男性名詞であるか女性名詞であるかが、フランスで議論となっていました。フランス語の名詞には必ず「男性」または「女性」の性別がついているので、新しい言葉が生まれるとその言葉の性別を決めなければならないのです。
「ル コヴィッド? ラ コヴィッド?」
多くの人は、フランス語の ”coronavirus [コろナヴィるス]”(コロナウイルス)という名詞が男性名詞のため、新型コロナウイルスの名称である Covid-19 (covid dix-neuf) も男性名詞として、自然に le Covid-19 と言っていました。(le は定冠詞の男性形です)
ところが昨日、フランス語の権威であるアカデミーフランセーズが「Covid-19 は女性名詞である」と決定したのです。
この決定の理由は Covid のフランス語訳から来ています。Covidという語は、もともと英語の ”coronavirus disease (コロナウイルス病)” の頭文字を取った略語として作られました。
この ”Coronavirus disease” をフランス語に訳すと、”maladie du coronavirus” となります。ここで、”maladie [マラディ] (病気)”という名詞は女性名詞なので、Covid-19 も女性名詞であるとアカデミーフランセーズによって判断されたというわけです。
しかしこれまで、フランス政府やメディア、パリの感染症研究の大御所であるパリのパスツール研究所などもみなそろって ”le Covid-19” と男性名詞で読んでいたので、おどろきです。
ちなみにフランス語文法の決まりとして、頭文字をとってつけられた略語は、その略語の最初の文字の名詞の性別によって全体の性別が決まります。
例えば、アメリカの CIA はCentral Intelligence Agency の略語ですが、これをフランス語では
Agence Centrale du Renseignement
と訳して呼んでいます。ここで最初の名詞 agence [アジャンス](機関、代理店、通信社)が女性名詞のため、CIAは女性名詞とみなされ、la CIA というように女性冠詞がつくわけです。
ちなみにスペイン語ではCovid-19の性別はどうなったかと調べてみると、スペイン語の権威 Real Academia Española (RAE) も同じようなことを言っていました。つまり「Covid の前に暗黙の了解として ”enfermedad [エンフェルメダッド](病)”という名詞がつくとみなせば、”enfermedad” は女性名詞であるので Covid-19 も女性名詞とみなせるが、一般の人々は、coronavirus (コロナウイルス)が男性名詞であるためにすでに el Covid-19 と呼んでいるので、男性名詞としてもよい。」ということです。これを見ると、レアルアカデミアエスパニョーラのほうがアカデミーフランセーズよりも寛容なようです(この緊急事態に、そんなことはどっちでもいい?)。
日本語でもコロナウイルス関連の言葉がいろいろ生まれていますが、性別を考えなくてもいいので気楽ですよね。
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