仕事、勉強、国際結婚などでフランスに住む場合、フランス語はどの程度必要?
今日は、フランスで仕事や勉強をする場合、またフランス人と国際結婚をしてフランスに住む場合に、フランス語力はどの程度必要か、ということを考えてみたいと思います。
まず最初に「海外で生活をするにあたって、必ずその国の言葉を話せる必要はあるか」という問題です。私はこれまでフランスを始め、アルゼンチン、タイ、マレーシア、短期でイギリスに住んだことがあるため、住む国が変わるたびに「その国の言葉を習得する必要があるか」を考えてきました。結論としては、私の経験では長期で住む場合:
フランス:フランス語が必要
イギリス:英語が必要
アルゼンチン:スペイン語が必要
タイ:タイ語はできなくても、英語でなんとかOK(バンコクの場合)
マレーシア:マレー語は必要なし、英語で100%OK(クアラルンプールの場合)
英語が国の公用語ではない場合、古い国ほど「自国語オンリー」の傾向があり、新興国ほど英語が通じる率が高いと思いました。これは新興国の人々にとって、自国が発展していく上で世界とビジネスをすること、つまり英語が使えることが必須であるからでしょう。それに比べて英語が公用語の国の人々は、もはや世界の共通語である英語以外の言葉を学ぶ必要性を感じないため、あまり外国語を学ぼうとはしません。
コラム:「ヨーロッパの子供達の92%が外国語を学んでいるのに対し、アメリカでは20%の子供しか学校で外国語を学んでいない」
さて、フランスで長期間住む場合には「フランス語が必要」と書きましたが、その人の滞在理由によっても「フランス語必要度」は変わってくると思います。それでは、「フランスで働く場合」「勉強する場合」「結婚してクラス場合」とケースごとに見ていきましょう。
フランスで働く場合、フランス語はどの程度必要?
職種やその人のポジションによってフランス語の必要度は変わってきますが、管理職でトップに近い地位であるほど、英語だけで仕事ができると思います。外国の方が日本で働く場合を考えればわかると思いますが、例えばカルロス・ゴーン氏は日本語は話せませんが、強いトップダウン方式で日本企業で数々の改革を行えました。彼には通訳・翻訳をする多くのアシスタントがいましたし、彼の部下は皆彼と英語を話したからです。しかし、外国人が製造現場で働いたり、販売、接客をする場合には、日本人とコミュニケーションをすることが多いので、日本語ができないといろいろと難しいでしょう。
それと同じようにフランスで働く場合にも、在仏日本企業のディレクタークラスで駐在する場合には、皆が英語を話してくれるので英語オンリーで大丈夫かもしれません。しかし、日本と同じようにすべてのフランス人が英語が堪能というわけではないので、多くの場面で通訳をつける必要がでてくると思います。
また、もう少し現場に近い仕事になると、会社の人だけではなく外部の人との打ち合わせも必要になってくるので、ある程度のフランス語が必要になると思います。書き言葉でも、社内の資料はすべて英語でも、外部から送られてくる資料やデータ、見積もり等はすべてフランス語の場合も多いでしょう。その度にいちいち通訳や翻訳をしてくれるアシスタントがいるポジションの人であれば問題ないでしょうが、その人に頼りっきりというわけにもいかないと思うので、ある程度のフランス語力は必要だと思います。
「ネイティブ並みのフランス語が必要」というわけではないですが、「簡単な会話はできる、理解できる」に越したことはありません。「込み入った内容である場合には英語で、もしくはアシスタントの通訳が必要であるが、皆が言っていることはだいたいフランス語で理解できる」程度になっておいた方が、現地の人の対応も違ってくると思いますし、フランスでよりスムーズに仕事ができると思います(話そうとする姿勢を見せた方が好意的になってくれる。日本人も日本語を話そうとする外国人にはわりと好意的でしょう)。また、一歩会社の外に出ればフランス語一色の社会であることは、日本と同じです。
もちろん語学力の他に、カルチャーの違いにとまどうケースの方が大きい場合はありますが(フランスはトップダウン型、日本はボトムアップ型など)。
フランスで勉強する場合、フランス語はどの程度必要?
音楽、芸術、料理などを学ぶためにフランスに滞在する人は、授業がすべてフランス語になるので、ある程度のフランス語力が必要だと思います(料理学校などの一部の外国人向けクラスでは、英語で授業が行われることもありますが)。せっかくフランスに行ってその国の文化を学ぶのであれば、フランス文化の土台をなしているフランス語で学んだ方が、より深く理解できると思います。「芸術に言葉はいらない」とは言えども、先生から学ぶのであれば先生の言っていることが理解できなければ、せっかくの留学も時間とお金の無駄になってしまいます。
またフランスの大学等で学問や研究を行うのであれば、フランス語が必須なのは当然です。ただし一部の高等プログラム(MBA等)は海外からの生徒を多く受け入れているため、授業は英語になる場合もあります。しかし、授業以外でのフランス人同級生との会話はほとんどフランス語になるでしょう。
フランス人と結婚してフランスに住む場合、フランス語はどの程度必要?
フランス人との国際結婚と言えば、以前は「留学中に知り合った」「日本の職場で知り合った」というケースが多かったですが、今では「ネットで知り合った」というケースが増えてきているようです。その場合、必ずしもお互いの会話はフランス語ではなく、英語というカップルもよくあります。「二人の共通語は英語だから、一緒にフランスに住む場合にも英語だけでいいのでは?」と思うかもしれませんが、私はある程度フランス語を話せるようになることをお勧めします。その理由として、2つ挙げられます。
1)彼の家族や友人はフランス語しか話さないかもしれない
フランス社会では、バカンスやクリスマス、誕生日といったイベントのたびに、かなり頻繁に相手の家族に会います。特に男性がフランス人で女性が日本人というカップルの場合(これが日仏カップルのほとんどだと思いますが)、男性の両親の家に行く機会が非常に多いでしょう。この時、もちろん相手の家族間の共通語はフランス語でしょうから、二人の間では英語でOKでも、彼の家族との会話はフランス語でするのがベターな雰囲気になってきます(ご両親が英語が上手とは限りません)。特に、フランス生活で重要な家族との食事の席ではフランス語だけになってしまうので、フランス語が分からないと全く会話に入れない状態になります。
また、フランスは常にカップルで行動する社会ですので、食事に呼ばれるのも友人と外出するのもカップル単位になる場合が多いです。二人で相手の友人達の集まりに呼ばれたら、やはり皆フランス人ですから、どうしても会話はフランス語中心になってしまいます。フランス人とフランス社会で暮らすのでしたら、ある程度フランス語が話せないと中に入っていけなくなります。
2)子供をフランスの学校に通わせたら、フランス人になる
フランス人と国際結婚をしてフランスに住みそこで子供が生まれたら、恐らく近くのフランスの学校に入れるでしょう。例えば「お父さんはフランス語、お母さんは日本語」と決めて両方の言葉で子供を育てていても、学校の影響力にはかないません。子供がフランスの幼稚園に入るやいなや、親がどんなに家で一生懸命日本語を話しても、その子の母国語はたちまちフランス語になってしまいます。そして、まだ小さな頃は日本語で話してくれるかもしれませんが、そのうちだんだんと返事はすべてフランス語となるでしょう。すると親がフランス語を全く話せない場合、子供と込み入った会話ができなくなる場合があります。
どこの国でどこの国籍の学校に入れるか、また両親の母国語はそれぞれ何かで全く状況は変わってきますが、フランス人と結婚してフランスに住み、子供をフランスの学校に入れるのであれば、子供は確実にフランス人に育ちます。思春期になっても子供としっかり話をするためには、親が子供の話すフランス語を理解できるか(自分がうまく話せなくても)、子供がちゃんと日本語を理解し話せるか、または家族の共通語(例えば夫婦の会話が英語であれば英語)でお互いにしっかり理解し合えるか。どれでもいいですが、確実にひとつ、子供とコミュニケーションが取れる言語を習得しておくべきです。
以上、仕事、勉強、結婚してフランスに住み場合の3パターンで「フランス語が必要かどうか」を考えてみました。いずれにしても、外国人がフランスに3か月以上住むために滞在許可書を取得する際には、フランス語のレベルテストが行われます。このテストでCECRL(Cadre Européen Commun de Référence pour les langues ・EU共通語学レベル基準)のA1レベル(初級)に満たない外国人は、各人のレベルによって50時間、100時間または200時間のフランス語研修を受けなければなりません。
フランスに長期滞在する際に必要なCECRLのA1レベルって、どれぐらいのフランス語力?
その後の各自のフランス語のレベルは、その人がフランスやフランス人にどれほど関わりたいかにもよりますが、とにかくフランスで長期滞在をするには、生活に最低限必要なフランス語力が要求されるのは確実です。
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