フランス語の不定詞の使い方: 指示、忠告、レシピ、マニュアルなどでの使用例
通常、フランス語の動詞は主語の人称(je, tu, il…)によって形を変化させますが、変化させない元の形のままで使うことがあります。この動詞の元の形のことを文法用語では不定詞 (infinitive) と言いますが、今日はこの不定詞の使い方について勉強してみたいと思います。
動詞の不定詞を使うケースで一番おなじみなのは、「指示、忠告、レシピ、マニュアル」などの文章です。まずは「指示、忠告」のケースを見てみましょう。
フランス語の動詞の不定詞の使い方:指示、忠告文
上の写真は、フランスのあるお母さんがコロナウイルスの影響で外出禁止令 (confinement) が発令されている間に考えたアイディアです。ブルターニュ地方に住むこのお母さんは7歳、6歳、4歳、2歳の子供を持つシングルマザー。学校が閉鎖となり外にも出られないこの期間を子供達とうまく乗り切るために、家の中に ”La boutique de maman (ママのお店)”をオープンしました。
お店に貼ってある紙には”Comment gagner de l’argent.(お金を稼ぐ方法)”とあり、その下に、様々なお手伝いが書いてあります:
- Nettoyer sa chambre : 20 € (部屋の掃除する)
- Nettoyer la salle de bain : 10 € (お風呂場の掃除する)
- Faire tous ses devoirs : 15 € (宿題を全部やる)
- Vider le lave-vaisselle : 5 € (食器洗い機から食器を出す)
- Mettre la table + débarrasser : 5 €(テーブルにお皿を並べる+片づける)
- Aider maman à ranger : 15 €(ママのお片付けの手伝いをする)
- Ranger les jouets perdus : 5 €(散らかっているおもちゃを片付ける)
子供達は朝8時から午後5時の間にこれらの「お仕事」をすれば、モノポリーゲームのおもちゃのお金がもらえます。 « Chaque lundi bonus de 20€ » と書いてありますから、月曜日に仕事をすればボーナスでさらに20€がもらえるというわけです。
また、横には « Police de maman (ママの警察) »という張り紙があり、以下のような忠告が書かれています。
- Ne pas écouter maman (ママの言うことをきかない)
- Taper son frère/sa sœur (兄弟をたたく)
- Gaspiller, voler la nourriture (食べ物を粗末にする、盗む)
- Crier dans la maison(家の中でわめく)
- Faire des bêtises(いたずらをする)
- Dire des gros mots (汚い言葉をつかう)
« …entraînera une amende de 1 à 5 euros et un confinement dans la chambre. »
以上のようなことをすると、ママ警察が1~5ユーロの罰金を徴収し、部屋の中に「監禁 (confinement)」という罰則が付くのです。
すでに家から出られない「監禁 (confinement)」状態なのに、さらに部屋からも出られないのです。ママ警察は厳しい!
このようにフランス語で「指示、忠告」を箇条書きするような場合には、主語は置かずに動詞の不定詞を文頭にもってきます。
Nettoyer sa chambre (部屋を綺麗にする)
Aider maman à ranger(ママのおかたずけの手伝いをする)
Faire tous ses devoirs(宿題をすべてやる)
ここでの不定詞は、動詞としての機能の一部を保ちつつ、文中で名詞句に相当する役割を持ちます。
ですので、上のリストは
Nettoyer sa chambre (部屋を綺麗にするということ)
Aider maman à ranger(ママのおかたずけの手伝いをするということ)
Faire tous ses devoirs(宿題をすべてやるということ)
というふうに、名詞のように訳すと意味がつかみやすいでしょう。
フランス語の不定詞を否定形にする場合
また、不定詞を否定文にする場合は、ne と pas は両方まとめて不定詞の前に置きます。
ne pas + 不定詞 ~をしないこと
例えば:
- C’est difficile de ne pas manger toute une journée.(一日中、食べないでいるのは難しい)
- J’ai dit à mon fils de ne plus fumer. (私は息子に、もうタバコは吸わないようにと言った)
禁止事項などを命令法で箇条書きにする場合には:
- Ne pas gêner la fermeture des portes.(ドアの開閉をさまたげないこと)
gêner = ~を邪魔をする、~に迷惑をかける - Ne pas déranger. (ホテルのドアなどに掛けるプレートの「起こさないでください」)
- Ne pas toucher. (さわらないこと)
また、注意事項を張り紙などに書く場合には:
- Merci de ne pas toucher. 「どうか触らないでください」
- Prière de ne pas stationner. 「どうか駐車しないでください。
のように、”merci de~(~することを感謝します)” “prière de~(~をするようにお願いします)” を使って丁寧にお願いをするように書く場合が多いです。
フランス語の動詞の不定詞の使い方:レシピの場合
次に、お料理のレシピではどのように不定詞が使われているかを見てみましょう。
以下は、「とろけるチョコレートケーキ」のレシピです。
- Préchauffer le four therm.6 (200°C).
- Casser la tablette de chocolat dans un petit saladier. Rajouter 4 cuillères d’eau et faire fondre au micro-ondes. Attention de ne pas cuire le chocolat.
- Faire fondre le beurre dans un autre petit saladier au micro-ondes et le rajouter au saladier du chocolat fondu. Mélanger.
- Dans un grand saladier, mélanger les œufs et le sucre, puis la farine.
- Verser le chocolat fondu dans le grand saladier et mélanger jusqu’à l’obtention d’une pâte homogène.
- Pour finir, verser dans un moule beurré et fariné. Faites cuire 25 minutes environ (ajuster ce temps de cuisson pour obtenir un cœur plus ou moins fondant). Bon appétit !
<レシピの訳>
- オーブンをサーモスタットの6(200℃)に温める。
- 小さなボールに板チョコを割って入れる。スプーン4杯の水を加えて電子レンジでチョコレートを溶かす。温め過ぎないように気を付けること。
- 別の小さなボールにバターを入れて電子レンジでとかし、そこにさっき溶かしたチョコレートを加える。混ぜる。
- 大きなボールで卵と砂糖をまぜ、その後に小麦粉を加えてまぜます。
- 溶かしたチョコレートを大きなボールにそそぎ、生地が均一になるまでまぜる。
- 最後に、バターと小麦粉を塗ったケーキ型に生地をそそぎます。約25分間オーブンで焼きます(中心をあまりとろとろにしたくない場合には、焼き時間を調整する)。召し上がれ!
このように、料理のレシピではすべて動詞が不定詞で始まっていますね。
ただし、レシピによっては「命令法」で書かれている場合もあります。
フランス語の命令法を覚えて、フランス語のレシピを読んでみよう
例えば同じチョコレートケーキでも、こちらはこのように書かれています。
Gâteau au chocolat fondant rapide
- Préchauffez votre four à 180°C (thermostat 6).
Dans une casserole, faites fondre le chocolat et le beurre coupé en morceaux à feu très doux. - Dans un saladier, ajoutez le sucre, les œufs, la farine. Mélangez.
- Ajoutez le mélange chocolat/beurre. Mélangez bien.
- Beurrez et farinez votre moule puis y versez la pâte à gâteau.
- Faites cuire au four environ 20 minutes.
- A la sortie du four le gâteau ne paraît pas assez cuit. C’est normal, laissez-le refroidir puis démoulez– le.
<レシピの訳>
- オーブンを180℃(サーモスタット8)に温めてください。鍋に細かく切ったチョコレートとバターを入れて弱火で溶かしてください。
- ボールに砂糖、卵、小麦粉を加えてください。混ぜてください。
- チョコレートとバターを混ぜたものを加えてください。よく混ぜてください。
- ケーキ型にバターと小麦粉を塗り、生地を流し込んでください。
- 約20分間焼いてください。
- オーブンから出した時には、ケーキが十分に焼けていないように思われますが、それは普通です。ケーキをさました後、型から抜いてください。
最初のレシピでは
Préchauffer le four. と不定詞で書いてあり、
二番目のレシピでは
Préchauffez votre four. と命令法で書いてありますね。
言い方は違いますが意味は同じです。「命令法」といっても、レシピの中では「~してください」というやわらかい感じです。また発音はというと、どちらも最後の子音は読まずに[プレショフェ]と読むので、同じですね。
さて、「ママのお店」のオーナーであるお母さん。このお店のおかげで子供達がたくさんお手伝いをしてくれたそうです。また、ためたお金でお菓子を買う時には、足し算の計算練習にもなるとのこと。フランスの皆さん、外出禁止令の間を工夫して過ごしていたようですね。
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