フランス語の ci / si と chi の発音の仕方
私がフランス語を習い始めの頃よりはましになりましたが、今でもネイティブによく発音を直される音があります。それは:
cinéma
Simon
ciel
などの、si, ci の音です。今日はこの音について解説したいと思います。
フランス語の ci / si と chi の発音の違い
以前、受講生の方が、
「Lucien という友達がいるのですが、私が Lucien というと Le chien に聞こえるみたいで、笑われるんです。」
と言っていました。”Lucien” という名前には、私たち日本人が苦手な u の発音と ci の発音がダブルで入っているので、確かに油断すると 「ルシアン君」は「犬くん」になってしまいます。
フランス語の ci / si と chi / shi は、カタカナで書くと両方とも「シ」「シ」としか書きようがないですが、実は音が違います。
IPA (International Phonetic Alphabet / 国際音声記号)で書くと、
ci / si は [si]
chi / shi は [ʃi]
となります。
例えば
- ciseaux [si-zo] はさみ
- citron [si-trɔ̃] レモン
- signe [siɲ] しるし、きざし
[signe]
これに対して、
- chien [ʃiɛ̃] 犬
- chiffre [ʃifr] 数字
- shinto [ʃin-to] 神道
[chiffre]
[shinto]
日本語の「シ」はというと…?
日本語の「シ」の音をIPA の発音記号で書くと [ɕi] になります。 [ʃ] が「無声後部歯茎摩擦音(むせいこうぶしけいまさつおん)」と呼ばれるのに対し、[ɕ]は「無声歯茎硬口蓋摩擦音(むせいしけいこうこうがいまさつおん)」と呼ばれています。
[ʃ] = 舌を後部歯茎に接近させて調音される無声の摩擦音。[ɕ] = 歯茎から硬口蓋にかけての広い範囲で舌を接近ないし密着させることにより調音される子音。
で、日本語の シ [ɕi] と、フランス語の chi/shi [ʃi] は、音で聞くとかなり似ています。
これでは、日本人が “Lucien” と言うと、”Le chien” になってしまうのもしかたないですよね…。
フランス語の ci / si の発音のコツ
では chi/shi [ʃi] の音に似ている [ɕi] の音しか日本語にない日本人の私達は、どうすれば si / ci [si] を区別して発音できるのでしょうか?
chi [ʃi] は日本語の「シ」[ɕi] の音に近いので、日本人は苦労せずに近い音が出せると思います。または「シャ、シ、シュ、シェ、ショ」と言う場合の「シ」とイメージするといいかもしれません。
それに対して ci/ si [si] は、「スィ」という感じで発音すると、近い音になると思います。
以上のように、ci / si と chi の発音の違いについて書いていたところ、「ci/si は東北弁の スィと同じですね」と教えてくださった方がいて、早速「秋田弁の音韻」について調べてみると、まさにその通りでした。
Wikipedia によると、
「共通語では/s/ や /z/ は /i/ と結合した場合に口蓋化してそれぞれ [ɕi] (シ)、[ʥi] (ジ)と発音されるが、秋田方言では口蓋化せず [sï] (スィとスの中間)と発音される」
だそうです。なんと秋田弁にはフランス語の ci/si の音が存在するのですね。
では最後にそれぞれの音の違いを聞いてみましょう。
chien [ʃiɛ̃] 犬
sien [sjɛ̃] 彼(彼女)の
違いが分かりますか?…分かるような、分からないような(涙)もうこれは、犬は日本語の[シ」で「シヤン」、彼(彼女)のは「スィヤン」という秋田弁の感じで乗り切ってください。
最後に意地悪な音声をお送りします…。
Le chien est le sien. その犬は彼の(彼女の)です。
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