フランス語のウ (eu /ou) の発音:私の聞き間違えのせいで独房に入れられた彼の話

最終更新日:2023年5月15日

私がフランスに語学留学したてのころ、それはそれはたくさんの聞き間違いや言い間違いをしました。自分の間違いを人に笑われるのはなんともないのですが、今日は人に大迷惑をかけてしまった話をひとつ。

リヨンでの語学留学中で知り合ったフランス人のボーイフレンド (現在の夫)が、ついに10カ月間の兵役に行くことになりました。今はもうフランスには義務化の兵役はなくなりましたが (1997年にシラク大統領のもと廃止)、当時のフランス人男性はみな、10カ月間の兵役が義務付けられており(女性は希望者のみ)、大学進学者の多くは大学卒業後、就職する前に兵役義務を果たすのが一般的でした。私たちはお互いの大学があったリヨンで知り合ったのですが、彼は実家がブルターニュ地方だったために、トゥールの兵舎へ兵役をすることに。私はリヨン第二大学で勉強をしていたためにそのままリヨンに残り、お互いに離れ離れになってしまいました。

当時はまだインターネットもなく、連絡手段は手紙か電話。兵舎に到着した彼は、さっそく自分の入隊した部隊の番号や住んでいる兵舎の住所を伝えるために、電話をくれました。

 

「住所を言うよ。トゥール兵舎の第2連隊の、○○、XX….」

 

聞き取った住所をメモにとり、「手紙をいっぱいかくからね」と約束をして、泣く泣く電話をきりました。

その日から私は、それはそれはたくさんの手紙をトゥールの兵舎で暮らす彼に宛てて書きました。1日1通から2通、語学学校の宿題をするよりも一生懸命に書きました (笑)。当時の私のフランス語力ではたいしたことは書けなかったのですが、毎日フランス語を書くというのは語学に慣れる上でとても役に立ちました(それを添削してもらえていたら、さぞ上達していたでしょう!でもラブレターなのでさすがに添削はありませんでしたが…)。彼の方もたくさんの手紙を送ってくれました。達筆すぎて、読めない箇所も多々ありましたが…(フランス人の手書き文字って読みにくいんです)。

そんなこんなで2か月ほどたった頃。毎週週末にはリヨンに来てくれていた彼から「今週末は兵舎から出られない。週末の2日間、独房に入れられるんだ」と電話がありました。通常、兵役の期間も週末は家に帰ったり外出はできたので、可能な限りお互いに行き来をして会っていたのですが、その週末は出られないというのです。

びっくりして「なんで!?なにかしたの??」と聞くと、なんと私の手紙のせいだと。

実は彼の所属する部隊は「第2連隊」ではなく「第12連隊」だったのです。私が2と12を電話で聞き間違えてしまい、毎日第2連隊宛てに彼への手紙を出し続けてしまったのです。違う住所に繰り返し届く私の手紙を転送するのにうんざりした兵舎の人が、「いいかげんに住所を訂正させる!」と怒り、罰として彼は週末の二日間外出禁止。しかも独房に入れられるというのでした。

わたしのフランス語の聞き間違えのせいでこんなことになるなんて…。Je suis désolée.(ごめんね)


ここで私の間違いの原因を解説しましょう。

第2連隊というのは、”deuxième régiment” (ドゥジエム れジマン)

第12連隊というのは、”douzième régiment” (ドゥジエム れジマン)

といいます。どちらもカタカナで読み仮名を書くとすると[ドゥズィエム]で同じですが、この [ウ] の発音がクセモノなのです。

 

2番目(deuxième) の発音の仕方

発音記号で書くと、[dø-zjɛm]となります。この [ø] の発音は、簡単に言えば「オ」の口をして「エ」と言う感じの「ウ」です(簡単じゃないですね…)。少し広がった「ウ」と思った方がいいかもしれません。そしてポイントは舌の位置で、舌の先を下の歯の裏にギュッとくっつける感じにします。

12番目(douzième) の発音の仕方

発音記号で書くと、[du-zjɛm] となります。この [u] の発音も舌の位置がポイントです。今度は舌を口の奥へぐっと引く感じにします。そして唇を小さくすぼめて前に着きだし発音する、深い「ウ」という音です。単語の中で “ou” と出てきたら、このように口をすぼめて舌をグッと後ろに引く感じで、「ウ」と発音してみてください。例えば、「どこに、どこへ」という意味の où は、口を小さくすぼめて発音する「ウ」です。

日本語の「ウ」と違うのは、日本語の「ウ」と言う時には舌が口の真ん中あたりになんとなく宙ぶらりんになっていますが、フランス語の “ou” は、舌がグッと口の後ろに引っ込んだ位置にあります。

それでは2つの発音を比べて聞いてみてください。

2番目(deuxième)/ 12番目(douzième)

 

12番目(douzième)の「ウ」の方が、口をよりすぼめる「ウ」です(梅干しを食べてすっぱい時のように)。2番目(deuxième)という時には、それよりも口のすぼめをゆるめて、軽めに「ドゥ」と言ってみてください。

最初のころはよく、deuxieme は “eu” を短めに [ドゥズィエム]、
douzième は “ou” を少し長めに [ドゥーズィエム] というようにごまかしていましたが、唇の開き方と舌の位置が分かれば長さで区別しなくても発音できるのではないでしょうか。


当時の私はまだ、douzieme と deuxième の違いを聞き取れませんでした。しかも電話での聞き取りはかなり難しいのです。

そんなわけで可哀そうな彼は、私の「ウ」の聞き間違えのせいで、週末の2日間を独房で過ごす羽目になってしまいました。スマホで簡単にメッセージが送れる今の時代にはありえないことですよね。当時はまだなんでも電話でやりとりしなければならなかったので、聞き取り力が必須でした。今は逆に、話すよりも文字で伝える方が多い時代。これからフランス語を学ぶみなさんは、しっかりと書く練習もした方がいいですね。

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