フランス語のil/ill の読み方:なぜ fille はフィーユで ville はヴィルなのか?
今日はフランス語の il / ill の読み方を勉強したいと思います。
「彼は」という主語人称代名詞の il は[イル]と読みますが、「太陽」という名詞の soleil の il は[イユ]と読むなど、il / ill の読み方には最初結構とまどいます。
けれどもちゃんと読み方の規則がありますので、ぜひ覚えてくださいね。
母音字+il / ill の読み方
母音+ il / ille は [イュ] と発音します。
ちなみに、[イユ] の音は発音記号で[ j ] と書きます。
œの文字は合字(ligature)と呼ばれ、2つ以上の文字を複数の文字を合成して一文字にしたものです。ユリウス・カエサルの表記「Julius Cæsar」の「æ」が典型的な合字の例です。フランス語ではこの œ の文字のことを “e dans l’o” (oの中に入ったe)と呼びます。
発音は記号は文字と同じく[œ]で、日本語の「ウ」の口をもう少し開けぎみにして発音する音です。
こちらもカタカナで読み方を書くと先ほどと同じく[ウイユ] となってしまいますが、こちらの「ウ」は日本語の「ウ」よりも唇をすぼめ、短めに発音します。
フランス語の「子音+il / ill」 の発音のしかた
母音が前に来た場合には常に[イユ]と発音するil/ill ですが、子音が前にくると例外が出てきます。
例えば、fille, famille のill は[イユ]と発音するのに、ville では[イル]のように l をルと読みます。
実は ville の発音が例外で、子音+il / ill の場合に [イル] と読む単語は次の3つ(とその派生語)しかありません。
それ以外は、[イユ]と読みます。
ここで、母音++il / ill の時は[イユ]と伸ばさないのに、子音+il / ill では[イーユ]と伸ばすのですかと質問がありそうですが、 [j] の音は[イユ]なので、
soleil eil sol [エイユ]
fille ille f [イイユ]
のように[イ]の音が重なって、「イー」と伸ばしているように聞こえるのだと思います。
ちなみに発音記号では[sɔlɛj] [fij] です。
余談ですが、フランスのケーキ「ミルフィーユ」は mille fille ではありません。日本ではカタカナで「ミルフィーユ」と書くので、「mille filles (1000人の女の子)」なのかと思っていらっしゃるかもしれませんが、フランス語では mille-feuille (1000の葉、シート)、または続けて millefeuilleと書きます。何重もの折込みパイ生地で作られるお菓子なので、このように呼ばれるようになりました。
どのように読むか、もうお分かりですね。
millefeuille [ミルフゥイユ]
なぜ ville はヴィルと読み、fille はフィーユと読むのか?
この謎は、フランス語の元の言語であるラテン語が関係しています。ラテン語で「都市」はvilla といいました。この villa は、年月と共に l の文字がひとつ落ちて vila になります。
さらにフランス語では vila の a が落ちて、vile [ヴィル]と発音されるようになります。しかし近世になると「フランス語の母語であるラテン語に忠実にしよう」という動きがあり(もしくは、vile (卑しい)という形容詞と区別をするために)、villaのように l を2つに戻します。しかし、読み方は [ヴィル] のまま残ったのです。
villa ⇒ vila ⇒ vile ⇒ ville
一方、女の子という単語の fille はラテン語で filia でした。これも年月とともにa が落ちてfili となりますが、読みにくいこともありフランスではだんだんと fille と発音されるようになったということです。しかし実際には、フランス語には19世紀まで “湿った l ” (l mouillé)という音が存在しており、たとえば「 fille は [フィーユ] ではなく、[フィルィユ] と発音するように」と文法家たちが決めました。
けれども言いにくい言葉はいずれすたれるのが原則。[フィーユ]という発音の方が一般になり、”湿った l” はフランス語から消滅してしまいました。
filia ⇒ fili ⇒ fille (l mouillé) ⇒ fille
最後に、母音+il/ill の音に慣れていただくために、“Les nouilles [レヌィユ] (パスタ)”という歌をご紹介します。フランスの子供達はパスタが大好き。茹でただけのシンプルなパスタにグルイエールチーズをたっぷりとすりおろして食べます。手抜き料理ですが子供達が大好きなので、お母さんも忙しい時には「今日は ヌィユね」 。子供達が「パスタじゃなきゃいらない!」というこの可愛いらしい歌で、母音+il/ill の音に耳を慣らしてくださいね。
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イズミ様
体験レッスンではお世話になりありがとうございました。
その後、工夫しながらフランス語を学び続けています。
+il、ill は発音の違いを深く考えずに、間違える度その都度修正していましたが、このように綴りの変遷を知ると覚えやすいと思いました。
パスタの歌も可愛らしいですね。楽しくフランス語を学ぶ工夫をされていて素晴らしいと思います。
Merci beaucoup !
これからもぜひ楽しくフランス語を勉強していってくださいね
継続は力なり 🙂