日本語にあってフランス語にない言葉

最終更新日:2023年12月27日

今日は「フランス語にない言葉」について書いてみたいと思います。

ない言葉というのは「浅い」という形容詞です。日本語では、

川が浅い

浅い井戸

浅なべ

傷が浅い

眠りが浅い

経験が浅い

日が浅い

考えが浅い

というように、実にいろいろなところでこの「浅い」という形容詞を使います。

ところが、私がフランスにいた時に「浅い川、ってどういうの?」とフランス人に質問し、
「une rivière peu profonde(少し深い川)だ」と聞き、とても驚きました。peu は「少し、少ない」という意味で、profondは「深い」という形容詞です。

つまり、「深い」の反対は「少なく深い」と言い、「浅い」という形容詞はないのです。ちなみに英語には shallow という形容詞があります。

とはいうものの、フランス人に「浅い」という概念がないわけではありません。フランス語ではさまざまな「浅い」を次のように表現します。

  • 川が浅い = La rivière est basse. (その川は水位が低い)/ La rivière est peu profond.(その川は深くない)
  • 浅い井戸 = un puits peu profond (深さが少ない井戸)
  • 浅いなべ = une casserole basse (低いなべ)
  • 傷が浅い=la blessure est légère (傷が軽い)、la blessure est peu profonde, la blessure est superficielle (傷は少なく深い、傷は表面的だ)
  • 眠りが浅い=le sommeil léger (軽い眠り)
  • 経験が浅い=manque d’expérience (経験の欠如)
  • 日が浅い = 彼女と知り合ってまだ日が浅い=Je ne la connais pas depuis longtemps. (私は彼女をずっと以前から知らない)
  • 考えが浅い=être irréfléchi (思慮がない)

 

「浅い=高さがない」場合には、「低い (bas)」

「浅い=少ない」という場合には、「軽い (léger)」

「浅い=足りない」という場合には、「~が欠乏している(manque de~)」

「浅い=表面だけ」という場合には、「表面的 (superficiel)」

のように、日本語では「浅い」のひとつで済む表現を様々に言い換えます。

 

このように見ると、人間の言葉は言語によって異なる領域に区切られていることがよく分かります(言語学ではこの単語の領域のことを「意味領域」といい、フランス語では champs sémantique と言います)。川が「浅い」という場合、日本語と英語では「浅い=shallow」と同じ意味領域になっている単語を使いますが、フランス語では「peu profond (少なく深い)」と言い、「傷が浅い」は「la blessure est légère (傷は軽い)」と言うように、意味領域がずれている場合があります。

ですから外国語を学ぶ時には、言語間の意味領域のずれを発見することを楽しみながら、単語や表現を覚えてみてください。

 

ところで、この「川や海が深い= profond」の反対語である「浅い」という一語の形容詞(英語の shallow にあたるもの)がフランス語にはないことについて、カナダのモントリオールに住む娘に聞いてみたことがあります(彼女は母国語がフランス語)。すると「私もそれ思ったことある。」という返事でした。彼女もやはり、フランス語と英語を話しているうちに shallow がフランス語では「少なく深い」としか言えないことが気になったそうです。

「だから、Martin(フランス人の男友達)と一緒に形容詞作ったの。”profond” の反対は ”peufond “よ。ハハハ…。」


 

最近見つけた「フランス語にない言葉」は、「暑がり」です。

寒がりは frileux/ frileuse という形容詞で

Je suis frileux. 私は寒がりです。

と言いますが、逆の「暑がり」は見つかりません。「彼は暑がりです」と言いたい場合には、

Il est très sensible à la chaleur. 「彼は暑がりです」

と言わなければなりません。

chaleureux/ chaleureuse じゃないの?と思われるかもしれませんが、これは「熱意にあふれた」「熱烈な」「真心のこもった」という意味で、「暑がり」とは違います。

Merci pour votre accueil chaleureux. 「あなた方の熱烈な歓迎に感謝いたします」

「深い」はあっても「浅い」はなく、「寒がり」はあっても「暑がり」はないフランス語。面白いですね。

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