フランス語の冠詞の使い分けについて: un それとも le ?

最終更新日:2020年3月3日

今日はフランス語の不定冠詞(un, une, des)と定冠詞(le, la, les)の使い分けについて解説したいと思います。日本語には冠詞がないため、我々日本人にとって冠詞の使い分けは難しいですよね。きちんと規則を理解していないと、すべての名詞に定冠詞 (le, la) をつけてしまいがちです。

冠詞の使い分けを理解するために、いろいろな例文を使って比較してみましょう。

Il y a un musée près d’ici. ① C’est le musée du Louvre. ②

「この近くにひとつの美術館があります。それはルーヴル美術館です。」
(限定されていない=不定冠詞 un )(限定されている=定冠詞 le )

 

Le bruit est un des problèmes de la vie moderne. ③ 「音(騒音)は近代生活における問題のひとつである。」
(音一般を総称=定冠詞 le )

 

J’ai entendu un bruit dans le couloir. ④ 「私は廊下でとある物音を聞いた。」
(とある音=不定冠詞 un )

 

C’est une voiture qui roule vite. ⑤ 「これは早く走る車だ。」
(多くの早く走る車のうちの一台 =不定冠詞 une)

 

C’est la voiture que je viens d’acheter. ⑥ 「これは私が買ったばかりの車だ。」
(私が買ったばかりの車(限定された車)=定冠詞 la )

 

De nos jours, on prend beaucoup l’avion. ⑦ 「 昨今、我々はよく飛行機に乗る。」
(飛行機一般=定冠詞 le )

 

Je prends toujours un avion de cette compagnie. ⑧ 「私はいつもこの会社の飛行機に乗る。」
(たくさんあるこの会社の飛行機のうちの一台=不定冠詞 un )

 

Il est arrivé un dimanche. ⑨ 「彼はとある日曜日にやってきた。」

(とある日曜日=不定冠詞 un )

 

Le dimanche, il joue au golf. ⑩ 「日曜日、彼はゴルフをする。」
(日曜日はいつも、一般的にすべての日曜日=定冠詞 le )

 

Le vert est ma couleur préférée. ⑪ 「緑は私が一番好きな色だ。」
(緑色一般を総称して=定冠詞 le )

 

La mer était d’un vert éclatant. ⑫ 「海ははじけるような緑色だった。」

(とある固有の緑色 =不定冠詞 un )

「Être de… ~の性質(特徴)を持っている」という意味になり、例えば

Ce vin est de première qualité. は 「このワインは一級品(の性質)だ。」となります。

 

このように見ると、

  • もの一般を総称して示す場合には、定冠詞の単数形 (le, la) をつける。③⑦⑩⑪
  • 限定されたものを示す場合にも定冠詞をつける(le, la, les)。②⑥
  • 多くの中のあるひとつのものを示す場合には不定冠詞をつける(un, une)。①⑤⑧
  • 「とある」「ある固有の」と訳せる場合、他と区別する場合には不定冠詞 (un, une) ④⑨⑫

となっていることが分かります。以上は主に数えられる名詞の場合でした。

フランス語の不定冠詞、定冠詞、部分冠詞の使い分け

次に数えられない名詞を使って、部分冠詞を含めた冠詞の使い方を比べてみましょう。

通常、数えられない名詞(液体、天気、勇気など)には部分冠詞 (du, de la) をつけますが、意味によっては不定冠詞や定冠詞をつける場合もあります。

L’eau est indispensable à la vie. 「水は生命に欠かせない。」

水一般を総称して=定冠詞 la

 

Cette source donne une eau très pure. 「この泉からはとても澄んだ水が出る。」

形容詞をつけて「とある固有の」と他と区別して:あるとても澄んだ水=不定冠詞 une

 

Je voudrais de l’eau, s’il vous plaît. 「お水をお願いします。」

数えられない名詞の前につく = 部分冠詞 de la

 

Le courage est une qualité morale.  「勇気は道徳上の長所である。」

勇気一般的に総称して=定冠詞 le

 

Il a montré un grand courage dans cette situation.「 彼はこの状況の中で、偉大な勇気を示した。」

形容詞をつけて「とある固有の」と他と区別して:ある偉大な勇気 =不定冠詞 un

 

Il faut du courage pour se lever à 5 heures tous les matins. 「毎朝5時に起きるのには勇気がいる。」

数えられない名詞の前につく =部分冠詞 du

 

Le russe est une langue difficile à apprendre. 「ロシア語は学ぶのが難しい言語だ。」

ロシア語一般的に総称して =定冠詞 le (一般的に言語の前には定冠詞をつける。le français = フランス語)

 

Quelle est cette langue ? 「この言葉はなに?」C’est du russe. 「ロシア語だよ。」

ロシア語の一部を示して(~のうちのいくらか)=部分冠詞 du

 

Elle parle un russe excellent. 「彼女は素晴らしいロシア語を話す。」

形容詞をつけて「とある固有の」と他と区別して:ある素晴らしいロシア語=不定冠詞 un

 

なんとなく違いが分るでしょうか?「形容詞をつけて“とある固有の”というように他と区別する場合の用法」が分かりにくいと思うので、もう少し例をあげてみましょう。

 

例えば、自然物や季節、抽象名詞など唯一のものを表す場合には、通常定冠詞をつけます。

le soleil (太陽), le ciel (空), la mer (海), la passion (情熱)…

ところが、このように唯一物でも形容詞などをつけて他と区別する場合には、不定冠詞を取る場合があります。例えば:

un soleil ardent (焼けつくような太陽)

un ciel sans nuages (雲一つない空)

une passion absurde (不条理な情熱)

この「他と区別する」場合に不定冠詞 (un, une) をつけるという使い方は、最初は慣れないと思いますが、あるものを総称して言うのではなく「形容詞をつけて他と区別させたい、際立たせたい」という時には、un, une をつけてみてください。私の中では “un,une” をつけて区別するのは、カマンベールチーズをひと切れ取り出すイメージに近いです。

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2件のコメント

  1. とても丁寧にいただきご説明いただきありがとうございます。フランス語の ‘des’ の意味、用法が分からなくて調べていました。そしたらフランス語の不定冠詞には複数形があるんですね、驚きました。英語にはa anしかないのにと思ってました。勉強不足で英語の不定冠詞にも無冠詞という概念があったんですね。改めて不定冠詞とは単に単数を表すための言葉ではないということに気づかされました。ありがとうございます。

    • 不定冠詞 un/ une の複数の場合もありますし、前置詞の de + 定冠詞 les が合体して des になる場合もあります。

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