どうしてもバゲット1本が買えなかった頃の話:フランス語の ”u” は [ユ] と読む
私がフランスに語学留学したての頃、どうしても「バゲット1本」が買えませんでした。
「バゲット1本ください。」は、
Je voudrais une baguette, s’il vous plaît.
[ジュヴドレ ユヌ バゲット スィルヴプレ]
と言いますが、私がパン屋さんでこのように言うと必ず「バゲットが2本」出てきたのです。
自分一人分なのでバゲットは1日1本で十分だったのですが、どうしてもどうしても2本出てくる。声が小さくて聞こえないのかと思い、がんばって大きな声で行ってみてもやっぱり2本出てくる。「いえ、一本だけです」と断れず、2本買って帰ってしまう気の弱い私でした。もちろん、朝・昼・晩3食食べても、一人で2本は食べきれません。
最初は「アジア人に対するパン屋さんのいやがらせか?!」とも思ったけれど、私が « une » と言うと必ず « deux ? » と聞き返されたので、発音が悪かったに違いない。でも何がどう悪いのか、長い間わかりませんでした。
さて、今になってはバゲット2本が出てくるわけが分かります。私の « u » の発音のせいだったのです。私はフランス語の読み方の基礎をしっかりと習っていなかったので、 « u » は [ウ] と発音するものとずっと思っていました(ローマ字読みに慣れていたせいもあるでしょうね)。
そこで、
une [yn] :ユヌ * [ ] の中は発音記号です
と発音しなければならないところを、
une [un]または[øn] : ウヌ
のように発音していたために、deux [dø] の [ウ] のように聞こえて「deux = 2本」だと思われたのでしょう(しかも、緊張して « une » の [u] を非常に意識して発音していたので、余計に「ウヌ!」になっていたと思われます 笑)。
フランス語では単語の中に « u » が出てきたら、「ユ」と発音します。(発音記号は [y] )
例えば:
université [ユニヴェルスィテ] [y-ni-vɛr-si-te] 大学
cutané [キュタネ] [ky-ta-ne] 皮膚の
lutin [リュタン] [ly-tɛ̃] (いたずら好きの)小悪魔
supermarché [スュペルマルシェ] [sy-pɛr-mar-ʃe] スペルマルシェではありませんので注意
jus [ジュ] [ʒy] ジュース
« u » を見るとなんとなく「ウ」と読みたくなるかもしれませんが、唇をすぼめた短い「ユ」です。発音の仕方は次の通り:
- [i] の音を出す時の口の形をする。
- 舌の先が、下の前歯の後ろにしっかりと押し付けられていますか?
- 舌の位置を変えないで、そのまま唇をすぼめて「ウ」形にする
- 短く「ユ」と発音する。
発音のポイントは「舌の先が下の前歯の後ろ側に強く押し付けられていること」です。舌がはなれてしまっていると、「ウ」になってしまいます。
余談ですが、私が「名前はイズミだ」というと、フランス人は
Isoumi
と書きます。「ウ」という発音はフランスでは “ou” と書くからです。”Izumi” と書いた場合には「イジュミ」と読むのですね。さらに面白いことに、”z”はしっかりと母音に挟んだ”s” にしてくれます(フランス語では、母音に挟まれた “s” は [s]ではなく[z]という音に濁ります)。
一日にバゲット2本は多すぎて食べきれなかった私は、 « une baguette » と言う時に「指を一本立てて」言ってみたり、 « une demie baguette »(ユヌ ドゥミ バゲット) と言ってバゲットを半分だけ買う、という作戦にでました。こうすると、「ドゥミ(半分)」の部分がよく聞こえるので間違えられなかったのです。でもパン屋さんに一日2回行かなくてはなりませんでしたが…。
日本のパン屋さんは自分でほしいパンをトレイに載せてレジに持っていく形なので、言葉が話せなくても大丈夫ですが、フランスでは店員さんに言ってショーウィンドウ内のパンをとってもらわなければならないので、フランス語が話せない人にはちょっとハードルが高いですよね(私はパン屋さんやお肉屋さんに行く時はいつもドキドキしていました)。
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