Monsieur はなぜ「ムスィウ」と読むのか

最終更新日:2022年8月6日

フランス語を勉強するときにまず学ばなければならないのが「フランス語の読み方」。
フランス語では

ai というつづりなら  [エ]

ou というつづりなら [ウ]

と読むなど、綴りと発音がかなり密接に関係しています。英語の i が、単語によっては [イ ]と発音したり [アイ]と発音するのとは異なります。

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…と、いつも説明をしていたのですが、実は非常によくつかう ”monsieur” という単語の読み方が、この規則が当てはまらないことに気がつきました。

”monsieur” の意味ですが、最初の m を小文字にして使う場合には「男性、男の人」という意味になり、大文字で ”Monsieur” とすると、男性に対する敬称として、姓名、職名の前につける言葉になります。

例えば「デュポンさん」なら、”Monsieur Dupont [ムスィウ デュポン])” と言います。英語の「ミスター」と同じですね。この敬称 Monsieur は職業や肩書にもつけることができ、例えば

Monsieur le Ministre [ムスィウ ル  ミニストる] 大臣閣下

女性大臣なら
Madame la Ministre [ マダム ラ  ミニストる] 大臣閣下

と言います。

さて、フランス語の綴りと読み方の規則に従って読めば、”monsieur” は [モンシィウーる]のような発音になるはず。でも実際には、/mǝ.sjø/ (me-sieu) [ムスィウ]のように発音します。なぜでしょうか?

monsieur の読み方

実はこの ”monsieur”、もともとは “mon seigneur [モン セニユーる]” でした。mon は 「私の」という意味の所有形容詞。seigneur は「領主、主君、あるじ、支配者」という意味。“mon seigneur XXX” で「私の主君、XXXさん」というよう感じで使われていました。

ところが、monseigneur seigneur の部分が sieurと短くなり、”monsieur” となったのです。

ですので「綴りと読み方は関連している」と言えども、この単語は例外です。[モンシィウーる]とは発音せずに、[ムスィウ] のように発音してください。このように、年月と共に発音が変わっても、綴りが昔のままの形で残っている単語がたまにあります。時代と共に発音が変化しても、綴りはそれに追いつかないんですね。

Monsieur, Madame, Mademoiselle の省略形

せっかく Monsieur のことを話したので、この単語の省略形についても説明をしたいと思います。英語で Mister の省略形は Mr と書きますが、フランス語の Monsieur の省略形はM. です。

M.

エムのあとにポワン (.) がつきますので注意してください。

以前は Mʳや Mr のように書いている人もいましたが、今はフランス語ではM. に統一されています。

さて、Monsieur が複数いる場合には Messieurs [メスィウ]となり、 略形はMM.です。

女性もみておきましょう。madame [マダム] は女性に対する丁寧な呼びかけで、「奥様」というような意味ですが、姓の前につけて敬称として使う場合には大文字で Madameとなります。省略形は Mme で、M.と違ってポワン(.)はつきません。なぜならeは文字の最後にあたるからです。複数形はMesdames [メダム] で、省略形は Mmes 

また以前は、未婚の女性に対して Mademoiselle [マドゥモワゼル](省略形はMelle)という敬称がありましたが、「女性だけ既婚/未婚で区別をするのはおかしい」ということで、フランスでは2012年から行政書類には Mademoiselleという表記が使われなくなりました。

 

この省略形ですが、相手に呼び掛ける場合には使いません。例えば手紙の宛名や、手紙の中で相手に呼びかける文章では、省略せずにMonsieur Macron, Madame Depardieu というようにすべての綴りを書きます。

省略形を使うのは、例えば:

Je transmettrai votre demande à M. Boulanger.(あなたのご依頼をブランジェ氏に伝えておきます。)

というように、第三者の名前として書く場合です。


お店の人に「マダムと言われた」「マドモアゼルだった!」と一喜一憂したその昔。時代と共に言葉の使い方はどんどん変化していきます。例えばフランスの学校に提出する家族構成書類には、以前であれば “Père(父親)” “Mère(母親)” という欄がありそれぞれの名前を書いていましたが、今では “Parent 1” “Parent 2” (親1、親2)となっています。

もしかしたら、Monsieur, Madame という敬称も、いつかは使われなくなるのでしょうか。

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1件のコメント

  1. ふと、フランス語の文法書を読み始め、文字と発音の項を読んだ後、文法の項に入ると、すぐmonsieurが出てきますした。ところがonの部分の発音が、文字と発音の項で読んだこととは矛盾するのに、辞書にも文法書にも、その説明がなく、自分が文字と発音の項で説明を読み落としたのかと思いもしましたが、この度、こちらの解説を拝見し、例外発音であると考えて良いということで、安心しました。

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