フランス語の語順と文型
トレビアンフランス語アカデミーのプログラムでは、フランス語初心者の方にフランス語の基礎文法を教えています。ところが、初心者といってもそれぞれの生徒さんによって最初から非常にレベルが違います。この違いの理由のひとつに「英語がある程度理解できているかどうか」があると思っています。
英語がある程度わかっている方ですと、フランス語には英語と似ている単語が多くあるので「単語の意味を推測できる」という利点もありますが、なによりも「文の組み立て方が分かっている」ということが大きいです。そこで今日は、フランス語の文の構成、語順そして文型について見ていきたいと思います。
フランス語の文の組み立て方
フランス語の文の組み立て方を表で見てみましょう。(左から右への順番に組み立てます)
主語 (sujet) S |
動詞 (verbe) V |
属詞 (attribut) A |
直接(目的)補語 (complément d’objet direct) CD | 間接(目的)補語(complément d’objet indirect) CI | 状況補語 (complément circonstanciel) CC |
Les enfants | chantent. | ||||
Ils | sont | jeunes. | |||
Nous | aimons | le théâtre. | |||
Elle | donne | des gâteaux | à Paul. | ||
Il | parle | de son frère. | |||
Emilie | est venue | à 18 heures. | |||
On | se cultive | en lisant. ① | |||
J’ | ai caressé | mon chat | avec ma main. | ||
Il | a été nommé | directeur | hier. ② | ||
Cela | coûte | 100 euros. | |||
Je | trouve | intéressant | ce livre. ③ |
フランス語の文章は、矢印の向きで左から右の語順で組み立てていきます。
①の和訳:我々は読書をすることで教養を身につける。
②の和訳:彼は昨日、ディレクターに任命された。
③の和訳 : 私はこの本を面白いと思う。
属詞 (attribut =A) とは?
属詞とは、動詞を仲介として、一般に主語の属性(性質・状態・職業・身分など)を表す語です。属詞の役目を果たすものは、名詞、代名詞、形容詞、不定詞などです。
- Il est médecin. 彼は医者だ。[名詞]
- Elle est riche. 彼女はお金持ちだ。[形容詞]
- Cet appartement est à louer. このマンションは貸出中です。[不定詞]
- Ce pantalon est celui que j’avais vu en vitrine. このズボンは私がショーウィンドウで見たものです。[代名詞]
直接(目的)補語 (complément d’objet direct = CD, または COD )
前置詞なしで動詞に結びつく補語(目的語という場合もあります)
- Je mange une pomme. 私はリンゴをひとつ食べる。
- Julie range ses vêtements. ジュリは洋服を片付ける。
間接(目的)補語 (complément d’objet indirect = CI, または COI)
前置詞を介して動詞にむすびつく補語(目的語という場合もあります)
- Pascal parle à son frère. パスカルは彼の兄(弟)に話す。「~に話す」= parler à ~
- Sébastien se souvient de sa leçon. セバスチャンは授業を覚えている。「~を覚えている」= se souvenir de ~
COD、COI ともに動詞の後におくのが普通で、語順は原則として COD → COI になります。 Elle donne des gâteaux à Paul.
状況補語 (complément circonstanciel)
状況補語は、主語の状態(場所・時間・手段・原因・目的・価格)などを示します。状況補語になるものは、副詞、ジェロンディフ、前置詞つき不定詞、名詞、代名詞などです。
- Je suis parti avec eux. 私は彼らと一緒に出発した。[前置詞+代名詞]
- Elle est arrivée discrètement. 彼女はひそかに到着した。[副詞]
- Il faut travailler pour vivre. 生きるためには働かなければならない。[前置詞+不定詞]
- Ils marchent en chantant. 彼らは歌いながら歩く。[ジェロンディフ]
- Nous partons à huit heures. 私たちは8時に出発する。[前置詞+名詞]
状況補語は意味によってさまざまなカテゴリーに分けられます。
- Demain, j’irai à la piscine. 明日、私はプールに行くでしょう。[時間]
- En France, les paysages sont variés.フランスでは風景が変化に富んでいる。[場所]
- Il tousse bruyamment. 彼はうるさく咳をする。[様態]
- Elle cloue les planches avec un marteau.彼女は金づちで板にくぎを打つ、[方法]
- Je me couvre pour ne pas prendre froid. 私は寒くないように覆う。[目的]
- Il s’est sacrifié par amour.彼は愛によって自分を犠牲にした。[原因]
- J’ai crié à en perdre la voix. 私は声がかれるまで叫んだ。[結果]
- Si tu veux, je viendrai te voir. もし君がよかったら、君に会いにいくよ。[条件]
- Elle a réussi malgré son jeune âge.彼女はその若さにもかかわらず成功した。[譲歩]
- Tu es fort comme un ours. 君は熊のように強い。[比較]
- Ce livre coûte vingt euros. この本は20€だ。[価格]
状況補語の多くは、場所を移動させたり、削除することも可能ですが、いつもという訳ではありません。
Si tu veux, je viendrai te voir.
Je viendrai te voir si tu veux.
Demain, j’irai à la piscine.
J’irai à la piscine demain.
Tu es fort comme un ours.
Tu es fort. 状況補語は省略可能。
Ce livre coûte vingt euros.
Ce livre coûte [vingt euros]. 状況補語は省略できない。
フランス語の6文型
フランス語の文章は6文型に分類されます。最初に挙げた表をもう一度見てみましょう。
文型 | 主語 (sujet) S |
動詞 (verbe) V |
属詞 (attribut) A |
直接(目的)補語 (complément d’objet direct) CD | 間接(目的)補語(complément d’objet indirect CI |
状況補語 (complément circonstanciel) CC |
1. | Les enfants | chantent. | ||||
2. | Ils | sont | jeunes. | |||
3. | Nous | aimons | le théâtre. | |||
5. | Elle | donne | des gâteaux | à Paul. | ||
4. | Il | parle | de son frère. | |||
1. | Emilie | est venue | à 18 heures. | |||
1. | On | se cultive | en lisant. ① | |||
3. | J’ | ai caressé | mon chat | avec ma main. | ||
2. | Il | a été nommé | directeur | hier. ② | ||
1. | Cela | coûte | 100 euros. | |||
6. | Je | trouve | intéressant | ce livre . |
1. 第1文型(S + V)
Les enfants chantent. 子供たちが歌う。
Emilie est venue à 18 heures. エミリは18時に来た。
On se cultive en lisant. 我々は読書することによって教養を得る。
à 18 heures, en lisant は状況補語 (CC) と呼ばれる「付けたし」の言葉です。
2. 第2文型 (S+V+A)
Ils sont jeunes. 彼らは若い。
Il a été nommé directeur hier. 彼は昨日、ディレクターに任命された。
第2文型では、S と A がほぼイコールになります
ils = jeunes / il =directeur
3. 第3文型 (S+V+CD)
Nous aimons le théâtre. 私たちは演劇が好きだ。
J’ai caressé mon chat. 私は猫を撫でた。
le théâtre = 直接目的語 (CD)
mon chat = 直接目的語 (CD)
4. 第4文型 (S+V+ CI)
Il parles de son frère. 彼は彼の兄弟のことを話す。
Ce bébé ressemble à sa mère. この赤ん坊は母親に似ている。
de son frère = 間接目的語 (CI)
à sa mère = 間接目的語 (CI)
この第4文型は英語にはない文型です。「~について話す」という場合には、parler de ~というように前置詞の de とセットで用います。「~に似ている」という場合には、ressembler à ~ のように前置詞の à とセットで用います。
5. 第5文型 (S+V+CD+CI または S+V+CI+CD)
Elle donne des gâteaux à Paul. / Elle donne à Paul des gâteaux .
(語順は原則として COD → COI)
- des gâteaux = 直接目的語 (CD)
- à Paul = 間接目的語 (CI)
6. 第6文型 (S+V+ CD+A または S+V+A+CD)
Je trouve ce livre intéressant. / Je trouve intéressant ce livre.
第2文型では、S と A がイコールになりますが、この第6文型では、CD イコール A となります。
- ce livre= 直接目的語 (CD)
- intéressant = 属詞 (A)
英語とフランス語は文の組み立て方(語順)がほぼ同じなので、英語をきちんと理解してからフランス語を学ぶ人にとってこの語順は自然にできますが、そうでない人はまずこの語順をしっかりと覚えてください。
言語学者のソシュール(Ferdinand de Saussure)が強調した、言語の基本概念があります:
Le signe linguistique est linéaire : il se déroule dans le temps. Deux unités se présentent toujours l’une après l’autre, donnant ainsi vie à la chaîne parlée.
言語記号は線状におかれる。それらは時間と共に展開されていくのだ。2つの要素はいつも必ず前後に置かれる。こうして言葉の鎖に生命が吹き込まれるのだ。
当たり前のことのようですが、言葉を話す時には2つの単語を重ねて立体的に置くことはできず、前から順番に時間差でひとつずつ発せられます。それでも現在、過去、未来のことや仮定、推測などと複雑な状況を立体的に表現できるのは、言葉を文法通りの正しい順番に置いていくからです。この順番がバラバラだと相手に意味が通じなくなりますので、みなさんもぜひこの語順をしっかりと覚えてください。
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学生時代に大好きだった文化人類学(レヴィ・ストロース)や言語学の本にソシュールの名前がしょっちゅう出てきていました。懐かしい名前です。
この考え方がコンピュータ機械翻訳の開発に大いに役に立ったのだと思います。
日本語が母国語なので、なにも考えずにはなしますが、フランス語は、考えればかんがえるほど、概念が元々違うのでやっぱりかなり厳しいなと感じますが 全部一度に理解して使いこなせる頭はないので 焦らず 間違いながら積み重ねて
いくしかないですが、日本人が間違いやすい点なども
他にも解説してくださり謎が溶け出しうれしいです