指示代名詞①(男性形・女性形): celui, celle, celui-ci, celle-ci, など
「これ、それ、こちら、そちら」という意味を表すフランス語の指示代名詞 (les pronoms démonstratifs) と呼ばれるものには、実にさまざまな形があります。「それらの使い分けが分からない」という質問をよくいただきますので、今日は指示代名詞についてまとめてみたいと思います。
フランス語の指示代名詞
種類と形
まずは種類と形を見てみましょう。
単数形 | 複数形 | ||
男性形 | 単純形 | celui | ceux |
複合形 | celui-ci celui-là |
ceux-ci ceux-là |
|
女性形 | 単純形 | celle | celles |
複合形 | celle-ci celle-là |
celles-ci celles-là |
|
中性 | ce ceci (日常ではあまり使わない) cela (会話では ça となる) |
指示代名詞の男性形、女性形、単数形、複数形などの形は、それが置き換える単語の名詞の性数によって変わります(例えば、女性単数名詞の robe であれば celle で置き換えます) 。
意味は:
celui / celle / ceux / celles = 「…のそれ」「…の人」「…のもの」
celui-ci / celle-ci/ ceux-ci / celles-ci = 「こちら、こちらの人(もの)」
celui-là / celle-là / ceux-là / celles-là = 「あちら、あちらの人(もの)」
(「こちら、あちら」と訳しましたが、それらのものが目の前にある場合には距離の近い・遠いの差はありません)
という感じになりますが、訳しにくいので各例文で意味を確認していってください。
ここでは、指示代名詞の女性形、男性形のみを見ていきます。中性の指示代名詞については、こちらをごらんください。
指示代名詞(男性形・女性形)の使い方: celui, celui-ci, celle, celle-ci…
指示代名詞は、以前にすでに出てきた名詞を繰り返さないために、その名詞の代わりをします。
指示代名詞の男性形・女性形は、celui, celle, ceux, celles のみで使うことはありません。以下で見ていくように、
1)複合形にして -ci または -là を後ろにつける
2)前置詞や関係代名詞をつけて指示代名詞を限定する
という形でしか使わないことを覚えておいてください。
1)【指示代名詞の複合形 : celui-ci, celui-là, celle-ci, celle-là…】
●直示表現(話し手が指で示しながら “celui-ci, celui-là” などと言う場合。会話で使う)
「この」「こちらの」「こっちの」というような意味。
Quelle est votre voiture? Celle-ci ou celle-là?
「あなたの車はどれですか?これですか、それともこれですか?」
voiture = 女性名詞なので、celle で受ける
ーC’est bien ce livre que vous voulez? 「あなたが欲しいのは、確かにこの本ですか?」
ーOui, c’est celui-là*.「ええ、この本です。」
livre = 男性名詞なので、 celui で受ける
*日常会話では、-ci よりも -là のほうを好んで使います。
話し手に近いものを示す (celui-ci) か、遠いものを示す (celui-là) かによって -ci / -là を使い分ける場合もありますが、遠近に関係のなく使う場合が多いです。
また直示表現の場合、対象は「もの」で、「人」には使いません。人を指す場合には、
C’est lui. / C’est elle. のように言います。
● 照応表現(文脈の中のあるものを受ける場合。書き言葉でのみ使う)
前の文章に名詞が2つ出てきた場合、ci はそこから近い方の名詞を指し、là は遠い方の名詞を指します。つまり、-ci がついた方が後出のもので、-là がついた方が前出のものです。 照応表現の場合には、対象は「人」にも使います。
Emma et Alice rentrent en scène. Celle-ci est habillée en noir tandis que celle-là porte une robe rouge.
「エマとアリスが舞台に登場する。後者(アリス)は黒い服を着ているが、一方で前者(エマ)は赤いワンピースを着ている。」
L’enfant voulait calmer son petit frère, mais celui-ci pleurait et réclamait sa mère.
「その子は弟をなだめようとしたが、弟(後者)は泣いて母親を求めた。」
この文章を celui-ci ではなく il で書いてしまうと、l’enfant を指すのか le petit frère を指すのかが分からなくなってしまいます。
2)【指示代名詞の単純形 : celui, celui, celle, celles】
これらは必ずうしろに de などの前置詞や関係代名詞がついて、意味を限定をします。意味は「~のそれ」となり、「~」の部分で限定・特定をします。
● 前置詞の de などを使って限定する
L’ascenseur de gauche est en panne, prenez celui de droite. (celui= l’ascenseur)
「左のエレベーターは故障中です。右の(それ)をお使いください。」
La chambre des parents donne sur la rue. Celle des enfants donne sur la cour.
「両親の寝室は道路に面している。子供の(それ)は中庭に面している。」(celle =la chambre)
指示代名詞の単純形は、de 以外の前置詞がうしろに来る場合もあります。
Je préfère les pulls en coton à ceux en acrylique. (ceux= les pulls)
「私はコットンのセーターの方が、アクリル製の(それ)よりも好きです。」
préférer A à B 「A のほうが B よりも好きである」
*名詞が形容詞で限定されている場合には、名詞だけを celui などで置き換えることはできません。
Je préfère le vin rouge au vin blanc.
X Je préfère le vin rouge à celui blanc. とは言えない。
以下の場合は、名詞が de で限定されているので指示代名詞で置き換えられます。
Je préfère le vin de Bourgogne à celui de Bordeaux. (celui = le vin)
● 関係代名詞を使って限定する
Les fleurs sauvages sont celles que je préfère. (celles = les fleurs)
「野生の花が、私が好きなそれだ」
Tu vois la fille là, celle qui danse avec Alex? C’est la fille de mon patron. (celle = la fille)
「ほら、あそこの女の子、アレックスと踊ってる子。あれ、僕の社長の娘だよ。」
● また関係節 (qui est, qui a été ) などを省略し、うしろに過去分詞を置いて限定することもあります。
Il y a trop d’accidents sur les routes; ceux causés par l’alcool sont les plus fréquents.
(= ceux qui sont causés par l’alcool sont les plus fréquents.)
「交通事故が多すぎる。アルコールによるもの(=事故)が、最も多い。」
このように、指示代名詞の男性形・女性形は
- 以前にすでに出てきた名詞を繰り返さないために、名詞の代わりする
- 必ず -ci / -là などの複合形にするか、前置詞や関係代名詞で意味を限定する
と覚えておいてくださいね。
中性の指示代名詞については、こちらの記事をご覧ください。
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