性別で意味が変わるフランス語の名詞
フランス語の名詞は。文法上の都合から男性名詞・女性名詞のどちらかに別れていますが、同じ形の名詞なのに、性別が異なると意味が異なるものもあります。また、同じ形のままで、つける冠詞の形を変える (un, une)ことによって両方の性に使えるものもあります。今日はそのような特殊な名詞をまとめてみたいと思います。
性別で意味が変わるフランス語の名詞
男性形 | 女性形 |
un aide 助手 | une aide 助け、援助 |
un critique 批評家 | une critique 批判 |
un garde 番人、監視人 | une garde 管理、保管 |
un guide 案内人、ガイド、ガイドブック | une guide 手綱(複数形で) |
un livre 本 | une livre イギリスのポンド |
un manche (道具の)柄、取って | une manche 袖 |
un manœuvre 作業員 | une manœuvre 操作 |
un mémoire 論文、研究報告 | une mémoire 記憶、思い出 |
un mode 方式、様式 | une mode 流行、モード |
un ombre カワヒメマス | une ombre 陰、影 |
un poêle ストーブ | une poêle フライパン |
un poste 地位、職 | une poste 郵便、郵便局 |
un physique 肉体、身体 | une physique 物理学 |
un Somme ひと眠り | une somme 金額、総計 |
un tour 一周 | une tour 塔、タワー |
un vapeur 汽船 | une vapeur 蒸気 |
un vase 花瓶 | une vase 泥 |
un voile ベール、(顔などの)覆い、 | une voile 帆、ヨット |
例えば ツールドフランスは
Le Tour de France (フランス一周自転車レース)
ですが、エッフェル塔は
La tour Eiffel (エッフェルタワー)
のように、tour の意味が違いますので性別も異なります。
ちなみに私はよく、un vase / une vase 、un manche / une manche、 une poêle / une poêleで間違えました…。冠詞を付け間違えるだけで意味が違ってくるのでややこしいですよね。まあ冠詞を間違えても、フランス人は話の流れで分かってはくれるのですが。
形も意味も同じだが、冠詞によって性別を区別する名詞
男性形 | 女性形 |
un complice 男性の共犯者 | une complice 女性の共犯者 |
un enfant 男の子供 | une enfant 女の子供 |
un locataire 男性の借家人 | une locataire 女性の借家人 |
un malade 男性の病人 | une malade 女性の病人 |
un artiste 男性アーティスト | une artiste 女性アーティスト |
un camarade 男性の仲間 | une camarade 女性の仲間 |
un concierge 男性の管理人 | une concierge 女性の管理人 |
un élève 男生徒 | une élève 女生徒 |
名詞を2種類に分ける時に日本語では「名詞の性」と言いますが、フランス語ではsexe(性別) ではなく genre(ジャンル)という言葉を使います。確かに genre féminin / genre masculin (女性ジャンル/男性ジャンル)と言いますが、机が女性 (une table) で本が男性 (un livre) である理由は文法上の都合以外にはないので、机はクラス1、本はクラス2と呼んでもいいわけです。
または、例えば形容詞を「女性形」にする場合には「男性形」の語尾を変化させるので、男性形を「印のないジャンル」、女性形を「印のあるジャンル」と呼んでもいいはずなのです。
petit 小さな (男性形)
petite 小さな (女性形)
この文法上の機能のために分けられた2つのジャンルが職業や肩書の名前になると、その人物の性別が関係してくるので、話が社会問題にまで発展してきます。例えば「教師、教授」という名詞の professeur [プロフェッスーる]はもともと男性名詞でしたが、女性教授にも professeur のように男性形のままで使うことが、社会の近代化と共にフランスでは大きな議論となっていました。今では女性教授には:
-
une professeur のように冠詞を女性形に変える。
-
une professeure のように冠詞を女性形にかえ、最後に e をつける (カナダのケベックで多く使われる)。
-
une professeuse のように、r を se にする(非常にまれ)
* masseur / masseuse (マッサージ師)の時の法則と同じ
などの解決策があげられています(フランスでは1の場合が多いです)。
この「職業名詞の女性化」については、また別の機会に書いてみたいと思います。
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