私は怒ってるのよ![h] の発音について
私がイギリスに短期英語留学をしていた時の話。同じクラスに、目の色がとってもきれいなフランス人の女の子がいました。
授業が終わると、突然彼女が私にむかって
「私、怒っているの!」と英語でいうのです。
なにか嫌なことでもあったのかなぁ、と思いながら「どうしたの…?」と聞くと、別に怒っているわけでもなさそう。
いったい何が起こったのでしょう…?
なんのことはない、彼女は単に「おなかがすいた」”I’m hungry.”と言ったのでした。
フランスではつづりに ”h” があっても発音をしません。例えば「ホテル」という単語 ”hôtel” は、「オテル」と発音をします。
このようにフランス語には”h”の発音がありませんから、フランス人は”h”の発音が苦手。彼女も
”I’m hungry.” の ”h” をうまく発音できずに、 ”I’m angry.” になってしまったのでした。
どこの国の人も、母国語にない音は発音が苦手ですよね。
有声のh、無声のh
ところが発音されないにも関わらず、フランス語の”h”には「有声のh」と「無声のh」の2種類があります。
例えば”hôtel”(ホテル)。この”h”は無声のhですが、”héros”(英雄、ヒーロー)の”h”は有声の hです。ただし「有声」といっても h を発音するわけではなく、やはり「エロ」と hは発音しません。
「有声」と「無声」の区別が必要になるのは、まずリエゾン等の「発音合体」が起こる場合です。例えば定冠詞をつけて「それらのホテル」という場合、les hôtels となり[レ ゾテル]とリエゾンをしますが、「それらの英雄たち」という場合には、les hérosを[レ エロ]とよみ、[レ ゼろ]とリエゾンをしてはいけません。なぜならこの英雄の”h”は「有声」なので、読まないですがあるものとして考えるのです。
les hôtels [レゾテル] : 無声の h = s とリエゾンする
les héros [レ エロ] : 有声の h = s とリエゾンしない
定冠詞の単数形を付ける場合も同じです。
L’hôtel のように、無声の h の前では h を読まずにその次の母音の ô から読むとされるので、定冠詞 le が l’ となりますが (élision エリズィヨンといいます)、le héros のような有声の h の前では、le のままになります。子音の h があるものとみなされるからです。
l’hôtel [ロテル]
le héros [ル エロ] 有声の h なのでエリズィヨンしない
この有声のhに関して日常会話でよくやる間違いは、“haricot” [アりコ]という単語。これは「インゲンマメ」という名詞ですが、haricot の hは「有声の h」なので、des haricots [デ アリコ]とリエゾンせずに言わなければなりません。ところがフランス人の子供達はよく、[デザリコ]とリエゾンしてしまうのです。
des haricots [デ アリコ] 有声の h なのでリエゾンしない
それではどうやって「有声のh」と「無声のh」を見分けるのでしょうか?
残念ながら、辞書で調べるしかありません。単語のhの前に Ϯ このような十字架の印が付いていたら、それは「有声のh」という意味ですので、前の冠詞とリエゾンをしないように気を付けましょう。
「有声のh」で始まる単語はゲルマン語が由来の単語で、「無声のh」で始まる単語はラテン語由来の単語です。ですからフランス語には「有声のh」で始まる単語はあまり多くなく、会話で一番よく出てくる「有声のh」で始まる単語はここでご紹介した“haricot”と”héros”ですので、これらをまず「有声だからリエゾンしない!」としっかり覚えましょう。
ちなみにフランス人がいう「エロキチ」ってなんのことか分かりますか?
”Hello Kitty(エロキチ)”
キティちゃんのことを、フランスでは「エロキチ」というのです…。”h” は発音しませんからね。かわいそうなキティちゃん。
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